10年で100kg太ったシンママギャルと俺(後編)
🕑 Added 2025-03-04 12:28:16 +0000 UTC
彼女の態度は変わることなく、亜里沙ちゃんと共に会う機会も減りもせず、再開してからあっという間に半年が過ぎようとしている。
亜里沙ちゃんの身長は目に見えて伸び、母親の方はやや横に大きくなったように思う。
「おじさん、夏休み遊びに行った?」
「夏休み?いやあ、どこにも…」
「ふーん。…そっか、大人って夏休みないんだもんね?」
無いことはないが、小学生の思う夏休みはほとんど無いと言っていいだろう。
「亜里沙ちゃんは?」
俺がそう尋ねると、ナポリタンを食べ終えた少女は唇を尖らせた。
「んーん、あんまり。ママお仕事いそがしいし。…お祭りに行ったくらい」
不服そうな少女を可哀想だなと思うのは、極々自然なことだろう。
かと言って、保護者不在でどこか連れて行くわけにも行かないのだけれど。
「あとね、プール行ったよ。亜里沙泳ぐの上手いの。ママは全然泳げなかったけど。太りすぎだから」
あの巨体をどんな水着で覆ったのか。というか、そんなサイズの水着があるんだろうか。そんな事を思ってしまった。
「おじさん泳げる?」
「まあ、そこそこ…」
「そこそこ?」
「えっと、普通くらいってこと」
「じゃあママより泳げるんだ。今度プールいこーよ」
「ははは、もう夏休み終わっちゃったからなあ……」
「亜里沙行ったとこ温水プールだったから平気だよ?」
「そ、そうなんだ……」
あっさりと逃げ道を封じられて、俺は曖昧に笑う。勿論、そんな機会があったら楽しいだろうが……流石に難しいだろう。流石にプライベートに踏み込みすぎな気もするし、そもそも休日が合うのかもわからない。
「……それより、宿題終わった?」
「やったー」
ストローを噛むようにしながら亜里沙ちゃんは不貞腐れたような顔をする。
「…どうかしたの?」
「ん-、おじさんさぁ。亜里沙のパパにならない?」
「……………………えっとぉ?」
亜里沙ちゃんは、まるで「今度一緒に遊ばない?」くらいの軽い調子でそんな爆弾発言をする。
「そしたら、おじさんも一緒にプール行けるし、ママお仕事でもおうち帰れるし。……亜里沙、今日ドラマ見たかったのに」
なんだか少し不機嫌だったのは、ドラマが見られなかったかららしい。……大人からするとそれくらい?とも思うが、子どもにとっては確かに一大事か。
それにしても…………。
「……そ、それは…………お母さんが、どう言うかな…………ははは」
「え~、じゃあじゃあ、亜里沙もママにお願いするから」
「あー…………ははは」
亜里沙ちゃんには申し訳ないが、ここで無難な反応をするとこの少女は本気で母親に交渉しそうなので、曖昧に濁しておく。
「あ、おじさんちってお部屋二つある?」
「え?ああ、いや……無いけど」
「そっかー……亜里沙ね、自分の部屋ほしいの」
カラカラと氷をストローでかき混ぜながら亜里沙ちゃんが続ける。
「ママね、寝てるときすっごいんだよ。ぐががーって、うるさいの。かいじゅうみたい。だから亜里沙一人で寝たいの。もう9さいだし、一人で寝られるもん」
「あはは…………それは、大変だね……」
確かに、あの体型の彼女はいびきもうるさそうだ。
「やっぱおじさん、亜里沙のパパになってよ。そしたら、亜里沙自分の部屋もらえるかもだし」
そして、すぐさま先ほどの話に戻ってくる。どうやら、今日はこの話で攻められるらしい。
「ママのこと好きなんでしょ?…それとも、亜里沙のこときらい?」
「いやいや、それは無いけど……まあ、ほら、そう言うのは色々大人の事情がね?」
「ふーん…………亜里沙、お茶取ってくる」
全然納得してない様子の亜里沙ちゃんが、コップを片手にドリンクバーの方に向かう。
俺は小さく息を吐いた。窓の方に視線をやると、国道を車が何台も通っていく。
そして、その向こうに、一目で彼女だと分かる巨大なシルエットが見えた。青信号を、どすっどすっと身体を揺らしながら歩いてくる。そして、俺の事を見つけ、ぶんぶんっと大きく手を振る。
「ははは…」
Tシャツの中で揺れる胸や腹肉に視線を向けながら、軽く手を振り返した。
「ママ来たー?じゃ、亜里沙こっち」
俺の向かいに座ってた亜里沙ちゃんが、俺の隣に移動する。母親の横は狭いし暑いらしい。
「ねえ、亜里沙ママにお願いしていい?おじさんにパパになってほしいって」
「そ、それはちょっと待ってようか……後でお母さんと話しておくから…」
「んー、ぜったいだよ?約束!」
小さく細い小指を差し出され、数年ぶりに指切りをする。
少女と約束していると、母親の方が汗を軽く拭いながら不思議そうな顔をする。
「おまたせ〜。亜里沙、なにしてたの〜?」
「ナイショー」
「えー、ママにも教えてよ〜」
そう言いながらドスンっと腰掛けた彼女の、最近更に膨らんだ腹や胸がテーブルに乗っかり揺れる。
メニューを取るだけで二の腕がぶるっと揺れて、テーブルに垂れそうだ。
そして、2人前は軽くありそうな注文をする彼女を横目に、亜里沙ちゃんが念を押すように「ぜったいだよ!」と言った。
「ゴメンね〜、ふぅ、いっつも亜里沙おんぶしてもらっちゃって」
「いや、このくらいは全然」
「そ?じゃあいいけどー、ふぅ、ほら、亜里沙もアタシよりそっちの方が掴まりやすいみたいだし」
笑いながら歩く彼女。腹と太ももの肉がぶつかり合うのだろうか、ややがに股のようにして歩いているせいで時折肩…二の腕の肉が触れる。
「それに、最近亜里沙も重くなってるしさー。アタシも、自分の肉だけでいっぱいいっぱいだし、なんてっ」
アハハと笑う彼女。いつだかと違い、天気も悪くないのでゆっくり歩く。どうせ帰っても風呂に入って寝るだけだ。
「で?亜里沙と何話してたの?約束までしちゃって、この子ヘンなお願いしてない?」
「あー……」
「え、マジでヘンな事頼んだの?も〜。迷惑だったらゼンゼン断っていいからね?」
「いや別に、迷惑って訳じゃないけど」
背中の少女は、自身の爆弾発言など知らぬと言わんばかりに小さな寝息を立てている。残暑と背中の熱さで少々汗ばんできた。
「ホント?って言うか、亜里沙何言ったの?」
「え、えーと……」
彼女の当然といえば当然の疑問を、サラッと受け流せるほど俺は器用ではなかった。
「んー?ふぅ、やっぱヘンな事?なんか亜里沙、ちょっと機嫌悪〜って感じだったし」
「ああ、なんか、ドラマ見れなかったとか言ってたよ」
「あー、そういう。悪いことしちゃったな〜」
信号待ち、彼女が、俺の背中で眠る愛娘の頭を軽く撫でる。
信号が青になり、また彼女のペースに合わせて歩きだす。と言っても、彼女の家まではもうすぐだ。
「亜里沙にもさー、色々ガマンさせちゃってるし……けど、あんたが助けてくれるから、最近は前よりマシみたい」
後半は、俺に視線を向けて、彼女が笑う。肉の付きすぎで丸くなった顔、二重顎にやや細くなった瞳。
記憶の中の、派手で鋭かった彼女の顔は、もうほとんど思い出さなくなっていた。
「こないだなんてさー、『ママ、おじさんと結婚してよ。そしたら、おじさんが亜里沙のパパでしょ?』だって。そんなコト言われてもねぇ?」
「…はは、それ、今日俺も言われた。亜里沙ちゃんのパパになってって」
「あんたにも言ったの〜?この子め〜」
彼女が亜里沙ちゃんの頭を少し乱暴に撫でると、むにゃむにゃとむずがる様に頭を振った。けれど、起きる気配はない。
「ゴメンね、ヘンな事言って。イヤだったらテキトーに流しちゃっていいから」
「ははは……まあ、俺は嫌じゃないから」
口にした途端、俺は何を…と思った。けれど出した言葉を引っ込めることはできない。
それどころか、彼女は俺の発言にも、狼狽えない。
「えー、ホント〜?まあアタシもそれもアリかなーとか思うけどさ〜」
「…アリなんだ」
「そりゃアリでしょ。亜里沙もこうやって外で待ってなくていいし、あんたに懐いてるし。アタシもちょっとは楽になるし。あんたの事けっこー好きだし」
「……え」
思わず足を止める。数歩進んだ彼女が、不思議そうにこちらを見る。
「する?亜里沙が喜ぶなら、アタシは全然良いけど」
「……いや、その……そんな気軽に……」
「アハハ、あんたがイヤなら別にいいけどー。ふー、あっつー。…で?どうすんの?」
こんなフランクに勢いだけで決めていいのか。と真っ先に思う。けれど、彼女はそうやってフッと俺の前から消えてしまったのだし、案外、そういうものなのかもしれない。
少なくとも、背中で寝ている少女が喜ぶのは、悪い話ではないだろうし。
一方で、彼女とこの少女の人生を背負えるかと問われると、すぐさま頷けるかは怪しかった。
「ま、こんなとこで決めてもアレだしね。亜里沙も寝ちゃってるし」
彼女はそう言うと、再び家の方を向き、俺をおいてドスドスとゆっくり歩き出す。
背中の亜里沙ちゃんを軽く背負い直して、そんな彼女のすぐ側までやや早足で並ぶ。
「…前向きに考えておきます」
「ん〜。ま、ゆっくり考えといてよー」
気のない彼女の返事がどこまで本気なのか、俺にはわからなかった。
「ねえー、いつホントにパパになるの?亜里沙早く自分の部屋ほしいんだけど」
「…………そうだなぁ」
全くゆっくり考える余裕などなかった。亜里沙ちゃんはすっかりその気でせっついてくるし、彼女もそれを止める気配は微塵もない。
「ねー?あ、でも引っ越しするなら冬休みの方がイイかな?」
「…………それは、そうかも」
「えー、亜里沙冬休み遊び行きたい。スキー行こ!ママは滑れなくてもパパがいるし」
「え〜ママ仲間はずれ〜?寂しいじゃーん」
「ママが太りすぎだから悪いの。パパはママに痩せろって言わないしー」
「いーの!よいっ…っしょ、パパはこれで良いって言ってるんだし〜」
「ママ暑い〜!」
外堀どころか本丸まで埋め立てる勢いで、完全に俺がパパになる前提で話が進んでいる。
今のこの光景を見て、俺たち3人を家族だと思わないほうが難しいだろう。
もう夜風は秋の気配がするというのに、未だ半袖の彼女は、愛娘を抱えたまま(やや嫌がられているが)のっしのっしと歩く。
亜里沙ちゃんも日々成長しているし、それなりに重いはずだが気にした様子もない。…まあ重いと言っても彼女の5分の1程度だろうけど。
「ねえパパー、ママになんか言ってよー」
じたばたと母親の暑そうな腕から逃げようとする亜里沙ちゃんが、唇を尖らせる。
…とりあえず、冬に引っ越しをすることになるだろうな…。
あっさりと彼女と籍を入れ(それはもう本当にあっさりと)、亜里沙ちゃんが転校しなくてもいいようにと彼女の自宅にほど近い家族向けのマンションに移り、亜里沙ちゃんのためにと俺の名字を変え、などとしているうちにあっという間に年が変わる。
いきなり一児の父になり、生活リズムは大きく変わった。
「ほら亜里沙遅刻するよー」
「へーき〜。前より近いしー」
靴を履き替えながら余裕そうに返す亜里沙ちゃん……もとい亜里沙。
朝食を食べて支度をするなんて随分久しぶりだったのに、いつしか体に馴染んでいた。
「はい、パパのお弁当。気をつけてねー」
「ありがと。さ、亜里沙、行くよ。行ってきます」
「行ってきまーす」
亜里沙と二人で家を出る。彼女は学校に、俺は最寄り駅に向かう。最初こそ亜里沙の姿が見えなくなるまで心配だったが、今は同じマンションの子たちと元気に登校するのを見送って駅へ向かうまでに馴染んだ。
なんと驚くことに、彼女も未だパートを続けていた。と言ってもペースは落としているが。
長い間居たからか、戦力として大きいのかもしれない。本人も楽しそうで何よりだ。
以前より二駅分長く電車に揺られ、出社する。
以前ならば死んだような顔で電車に乗っていただろうが、今はどちらかと言うと気力に満ちている……気がする。
ただ、以前よりずっと早く帰りたいと言う気持ちが沸いてしまうのは仕方のない事だろう。
以前は俺に業務を押し付ける家庭持ちをやや疎ましくさえ思っていたが、今ならば彼らの気持ちも充分に理解できる。
待つものがいると言うのは、実に良いものだった。
「ただいまー」
「おかえりー、んっしょ…あ、ヤバっ…っしょー…ふぅ」
玄関を開けてリビングの方から彼女の声とドスドスとした足音が聞こえてくると、疲労感も随分薄まる気がした。
彼女がドスドスと、廊下を狭そうに動きながら俺のジャケットを受け取る。
「夕飯もう食べた?」
「ふぅ、ううんー。亜里沙がパパ待ってるって」
「パパ早くー、お腹すいたー」
開けっ放しのドアの向こうから、俺のいる玄関まで亜里沙の間延びした声が聞こえる。大方テレビでも見ているのだろう。
「こーら亜里沙ー、まずお帰りでしょ~?」
俺のジャケットをハンガーにかけながら彼女がたしなめる様に言う。亜里沙も随分くだけた…というか素を見せるようになったと解釈しよう。
「はい、パパも手洗って。亜里沙ーお皿運んでー」
「はーい」
亜里沙がテレビを見ながら器用に彼女から皿を受け取り、テーブルに乗せる。手を洗い、亜里沙に倣って茶碗やら食器を運ぶ。
「…ママまたいっぱい作ってる。太るって言ってるのに」
「いーの!今日は特売で安かったし!亜里沙も成長期でしょ?」
「亜里沙はママみたいになりたくないー。ダイエット中だもん」
「だから亜里沙にダイエットは早いって、ねー?」
「ははは……ちゃんと食べないと背も伸びないからね」
「んー、それはヤかも」
そんな話をしながら、夕食を食べ始める。
彼女の大きな茶碗も、亜里沙の子ども用茶碗も前と同じものだ。一方、俺の方は家にほとんど食器が無かったので買い直した。
豚の生姜焼きと野菜炒めを混ぜたような大皿料理の横には、特売シールが貼られたままの総菜も置かれている。ごく普通の食卓だろうが、やや量は多い。
「てゆーか、パパもママにやせろって言ってよ。授業参観とか、亜里沙ハズかしいしー」
「えーっ、なんでよ~。ぁむ…んむ、ママ若くて自慢できるじゃんー」
「ママ太りすぎなんだもん。今度はパパが来てよ」
「ああ、うん。勿論行くよ。いつやるか決まったら教えてね」
「んー。ママは来なくていーからね。ドア通れないし」
「ちょ、そこまで太ってないから!」
今までの、一人で義務のように終えていた食事とは考えられない賑やかな食卓。
彼女たちも、以前よりは精神的に楽なのか、口数が多い…と思うのは俺の願望も込だろうか。
「えー、ホントに?ママ最近もっと太ったからなー」
「そんなことないでしょ~。亜里沙テキトー言わないのー!」
「テキトーじゃないし、こないだお風呂で言ってたじゃん。『150kg超えてたー』とか。亜里沙の5倍だもん。ちゃんと算数したから」
得意気に「150÷30は5だから、5倍でしょ?」と亜里沙が言う。算数は確かにしっかり正解だ。
一方、彼女の方は亜里沙とは対照的にやや不服そうな顔をしている。時間短縮と一緒に入浴していたのがこういった形で返って来るとは想像していなかったと言う感じだろう。
「亜里沙ね、こないだテレビで、太りすぎて動けない人の番組見たんだー。ママが心配ー」
そして、しっかりと母親にトドメを刺し、ともすれば満足げな顔をする娘は、パンと手を合わせ「ごちそうさまでした」と言って自分の食器をシンクに運んでいった。
そしてこちらに戻ってくるなり「パパ、タブレット貸してー。動画見たい」と悪気の一切無い顔で言ってくる。
ソファに座り、タブレットを抱えるように持つ娘を見ながら、彼女に尋ねる。
「あー……ああいう時って、注意とかした方が良い?」
「んー…や、注意は別にいーけど…亜里沙もアレで甘えてんだと思うし」
大きな口で肉と米を頬張る彼女は、先ほどの様子程ダメージは無いようだ。
「前はアタシも、ぁむ、んぐ、ヨユーなかったからさ。亜里沙もガマンしてたのかも。……言い方ちょっとキツいけどさ」
「ははは…似てるかもね」
「そーかなー…んー、ま、いーや」
引きずる様子も、気にする様子も然程ないのは彼女の性格ゆえだろう。
「ごちそーさま。洗い物お願いしていーい?」
「もちろん。ゆっくりしててよ」
綺麗に空になった皿を纏めてシンクに運び、そのまま洗い始める。
確かに、やや油分の多い食事かもしれないな…等と思っていると、後ろから「何見てんの~?」「ママあついー、ソファーへこんじゃうじゃん」と聞こえてくる。
軽く振り返ると、なんだかんだ言いながら母親のでっぷりした腹の脂肪にもたれるように座る亜里沙と、亜里沙の手元を覗き込む彼女が見える。ソファは深く沈み、体重が5倍と言うのも頷けるサイズ感の違いだ。
以前より丸くなった彼女を見ながら、しみじみと転がり込んできた幸福を噛みしめる。
彼女の体重増加と、俺の幸福度の増加がどこか比例しているような気がして、思わず笑いそうになってしまった。
「亜里沙、部屋に行った?」
「うん。夜更かししないようにって言ってきた」
「アハハ、一人部屋だからなー。どうだろ」
亜里沙に渡していたタブレットを手に寝室に入る。寝るときは使用禁止と言うのをなんだかんだ守ってるあたり根は素直で真面目だ。
2LDKと言うにはやや手狭な亜里沙の部屋だが、実際元々納戸として使うような部屋を子ども部屋にしているのだから仕方ない。それでも、初めての自分の部屋に亜里沙はご満悦だった。
キングサイズの頑丈なベッドに座った彼女が、乳液か何かを念入りに顔に塗っている。
元々美人だし、今でも個人的な感覚で言えば十二分に綺麗だが、気にしているのだろうか。
「ん?どったの?」
「え、ああ……いや、同じベッドだなって」
「アハハ、まだ言ってる。慣れなー。これからずーっとそのつもりだし。……ま、ケンカとか無ければだけど」
「喧嘩かあ……」
彼女に対して俺が何か不満をぶつける事は無さそうなので、諍いがあるとすれば俺のせいだろう。
「……というか、それ」
「ん?あー…アハハ、ね」
よく見れば、床に下ろされた彼女の脚の間にはゴミ箱が抱えられており、中にはまさに今捨てたであろうポテトチップスの袋が入っていた。
スキンケアの前に一袋平らげたのだろう。俺が亜里沙と少し話している間だろうか。
「亜里沙はやめろーって言うんだけどさ、なーんかクセっていうか…ないと寝らんないって言うか」
「ははは…あんまり太りすぎると亜里沙が怒るよ」
「それもそっかー。亜里沙もアタシがこんなカンジなんだから慣れればいーのに」
ぶよっぶよっと腹肉を揺すりながら苦笑する彼女の声色は、俺が知っていた昔の彼女の、尖ったような雰囲気は微塵もなく、どこか柔らかい物だった。
「心配してるんじゃない?ママが動けないくらい太ったらどうしようって。……多分、亜里沙の見たことある中で一番太ってるんだろうし」
「アハハ…それはそう。……イヤでも流石に動けなくなりはしないっしょ。ねえ?」
「ははは、流石にね……」
子どもの想像力は、俺たちが考えるよりもずっと遠くまで想像してしまう物だろうし、いずれ亜里沙もとやかく言わなく……いや、どうだろう。苦言は呈し続けるかもしれない。
「てゆーか、パパ的にはどうなのー?」
ベッドに座ろうとした俺を、彼女の太くだるッと揺れる腕が摑まえる。
最初に一目惚れした時から10年以上が経ち、体重も体脂肪も著しく増量した身体に、半ば抱き寄せられるようにして二人でベッドに転がる。
キングサイズの、耐荷重のあるもので良かった。
彼女の、150kgオーバーと暴露された巨体が、けれど体重をかけないように両手両足を広げて、俺の上にのしかかる。
だぶっと垂れた腹の脂肪がシャツ越しに触れる。性器が立ち上がり、弛んだ彼女の脚にむにぃっと触れる。
「アハハ、聞くひつよーもないか~…んむ…♡」
亜里沙が一人部屋と言う事は、必然的に夫婦の寝室は二人きりなわけだ。
一応新婚夫婦なのだし、お互い性欲が無くなるにはまだまだ遠い年齢だ。亜里沙の保護者の中でダントツで彼女が若いのも事実だろう。
ならば、こうなる事もまあ……ある程度はあり得る話なのだ。
「んはぁ…♡…ふぅ…どーする?シちゃう?」
「……明日仕事だけど…」
「そーなんだよねー、んっふ、っふー…っしょ、っと」
どす、どす…彼女が荒い息を吐きながら俺の上で前後を逆にする。スウェットに包まれた、枕と同じくらい大きな尻が目の前いっぱいに広がり、ぶるっぶるっと揺れる。
「んふ、じゃ、口でシよっか。ふー、早めに終わるし。ふぅ、どーせアタシは後で歯磨かなきゃだからさー」
歯を磨くと言うのは、先ほどのポテトチップスがあるからだろう。……どちらかと言うと、彼女の方が乗り気なのはよくある事だ。
「…じゃあ、お願いします」
「なんで敬語ー。お願いされまーす…んしょ、んふ、んむ…♡」
寝間着のスウェットが脱がされ、下着を脱がされ、一瞬ひんやりしたのもつかの間、熱い彼女の口の中に性器を含まれる。
「んはぁ…♡♡んふぅ…♡♡あらひろも、ふがへへー…」
「っ、ああ…」
目の前でばるっばるっと揺れる尻肉に手を伸ばし、そのままだぶついた脇腹の肉をかき分けながらゴムの伸びたスウェットを下ろす。
やや派手だがどこか野暮ったいデザインの大きな下着には、うっすらシミが出来ており、それを脱がすと、むわぁっと汗と女性の香りがする。
「んふぅ…♡んっふー…♡♡おひり、おろひへへーき……?」
「……た、多分…」
「あはは…んふー…♡んはぁ…♡ヤバかったら、お腹叩いてねー…♡んちゅ、んふぅ…♡♡」
ショーツを半ばまで下ろしたまま、ゆっくりと彼女の大きすぎる尻が顔に降ってくる。
むにゅぅっと埋まるように脂肪に押し付けられ、強烈とも言える香りが広がる。
それと共に、彼女が身体を再度倒し、俺の性器を口に含む。
でっぷりとした腹肉が俺の上でぶにゅんっと潰れるように広がり、顔は太ももで完全に押さえられてしまう。
「んふぅっ…♡♡んちゅぅ…♡♡じゅるるっ♡♡ぐぶっ…っふー…♡♡」
されてばかりでは…とばかりに、両手で彼女の尻を抱えながら少し割り開き、舌を秘所に伸ばす。
もさもさとした毛の感触と、苦いようなしょっぱいような味。濃く甘ったるいような、酸っぱいような香りが広がる。
「んふぅぅっ♡♡んふー…♡♡じゅるるっ♡♡じゅぶっ、じゅぶぶっ♡♡」
ずっしりと重たい感触とは裏腹に、性器が熱い口内で舌になぞられ、じゅるる…っと吸われ、今にも達しそうだ。
「んふふ…♡♡っんふぅぅ♡♡じゅるっ♡♡んれぇ…んちゅぅ…♡♡じゅるっ♡♡」
じわじわと汗や他の液体で顔が濡れていく。明日仕事だからとセックスをしなかった意味がないのではないかと思わないでもない。
息苦しく、動こうにも上に乗る150kgを超える彼女のせいで動けない。
時折、彼女が身じろぎするたびにズシっと重たい感覚がする。
「んふぅっぅ♡♡じゅるるっ♡♡ずちゅぅっ♡♡ずちゅっずちゅっ♡♡♡」
ピストンのように口で搾られ、どすっどすっと重たい感覚を受けながら、俺は呆気なく射精する。
どっぶ…びゅるるるるっ…!びゅるるるるっ…!!
「んっぶっ♡♡んんっふっぅ♡♡♡んっぐ…んぐぅぅっ♡♡♡んっぐぅぅ♡♡♡♡」
彼女は吐き出すどころか、より吸いつくそうと息を漏らす。汗ばんだ太ももとじっとり汗をかいた尻肉、濡れた秘部からダラダラと零れる愛液。
彼女の重たい身体が、尻が、がくっがくっと震え、まるで漏らしたかのようにぶしゅぅっと秘部から液体が出る。
「んっむぅ…♡♡っぐぅ…♡♡っふぅぅ…♡♡っぷぁ…んっぐ、っふぅぅ…♡♡♡やーば…♡♡めっちゃ、んふぅ、出てるじゃん…♡♡っっふぅ…♡♡」
彼女が、口を離し身体を持ち上げようとする。そのせいで、余計にずしぃっと顔や体に重量がかかり、俺は慌てて彼女のでっぷりした腹肉を左右からぼよっぼよっと叩いた。
「あっ、っふぅぅ♡やばっ…んっしょ、んっふ♡♡っぐふぅ…♡♡」
彼女が、どすんっと身体を横にずらし、むわぁっと湯気が出そうなほど熱い秘所から解放される。ごろんっと横向きになった彼女に手を伸ばし、ぐっと体を起こすために抱き寄せる。
だぶだぶとした身体の脂肪に指が沈む。お互い、汗だくだ。
「っふー…♡♡アハハ…♡♡んっふ、キモチ、ふふぅ、よかったー?……っふー…♡♡」
「はぁ…ふー……凄かった…」
「んふふ、っふぅ♡♡…あー…ぐっふぅ♡♡ヤバ、んっふ、動いたから…♡♡」
彼女が一瞬顔をしかめ、口を押える。
「ぐっふぅ…♡♡んぐっ…ぐぅぇええっっっふっぅ♡♡♡…アハハ…めっちゃ、げっぷでちゃった…ぐっふぅぅ♡」
あの頃、手など到底届かないはずだった彼女が、口元に俺の精子をつけたまま、品のない大きなげっぷを吐きだした。その事実が、更に俺の情欲をかきたてる。
でっぷりと肥えて、太ももの上に乗っかった彼女の腹肉を、背中から抱き寄せるように触れる。
「…んっふぅ…♡ちょ、なーにー?…てか、ふふぅ…ゲップ、流石に引いた?」
「……なんか、凄かった」
亜里沙が聞いたら、怪獣みたいと顔をしかめそうなほどだ。
「てか、んふー…なんで、そこ揉むの~、ふひゅー、っふぅ…♡♡」
汗だくで、むわぁっと強い匂いを放つ彼女。口を開くと、何とも言えない臭いがする。
ややけだるげに座る彼女を後ろから抱いたまま、何度か唇を重ねる。
「んちゅぅ…♡♡んふぅ…♡あー、パパも、ふぅ…ふー…♡歯、磨かなきゃねー…♡」
「……ははは、そうだね」
彼女の、だるっとした腹の脂肪や、その上に乗る柔らかい胸、ぶよぶよと脂肪のついた脇腹に触れる。
触れる事すらできなかったはずの、俺の前から消えた彼女は、こんなに重量を伴って、今俺の腕の中にいる。
その事が嬉しい。
……そして、それ以上に、ただ単純に、彼女とこうしていられるのが嬉しかった。
「ほーら、ふぅ、んふー♡…はやく、ふー、歯磨きして、ふぅぅ…♡寝ちゃお…」
「……うん、立てる?」
「流石に、ふー、そこまでデブってないしー…♡……でも、パパに、ふー、手伝ってもらお」
彼女が甘えるような声を出して、俺の腕に掴まりながらベッドから降りる。
「うわー…てか、下着なんか濡れてキモ…」
「ははは……」
二人で洗面所に向かい、歯を磨く。洗面所は、やはりこの体型の彼女と並ぶと狭い。
「…てかさー…パパ、ふー、結構アタシが太ってるの、んふぅ、嬉しーっぽいよねー」
でっぷりとした腹と、大きいが垂れた胸で俺の腕を掴まえながら、彼女がにんまり笑う。
「……ははは……亜里沙には内緒で…」
「アハハ、んー。じゃ、今度デートしてよ。亜里沙も連れて、デートっぽいデート、しなかったし」
「そんなことでよければ、いつでも」
「じゃ、約束ー」
彼女の、太く短く見える小指と指を絡ませる。
そして、彼女に腕を掴まれたまま、洗面所から足音を殺しながら、そーっと出る。
廊下の電気を消したまま、亜里沙の部屋のドアをゆっくり開ける。
すぅすぅと小さい寝息に、二人で顔を見合わせて笑う。
寝室に入ると、鼻につく臭いに二人で困ったように顔を見合わせた。けれどお互い、どうするでもなくベッドの上に横になる。
「ふぁ…んふぅ、っしょ…じゃ、おやすみ」
仰向けだと重たくて苦しいのか、横を向いた彼女が俺の身体を抱き寄せ、呟く。
じんわり熱く、太ももに捉えられた脚は重く、汗臭くもあるが、柔らかい身体を抱き返しながら彼女に呟く。
「おやすみ……また明日」
「んー…また明日」
彼女が、明日も、きっとその先もずっと俺の腕の中にいる。なんだか、そう確信してしまった。
しばらくして、怪獣のような彼女の寝息に、思わず苦笑して顔を胸に埋めた。
ほどよい耳栓になりそうだった。
「もー、ママー!またこーいうの隠して~!」
家に帰るなり娘の怒ったような叱るような声が聞こえ、思わず苦笑する。
平べったいサンダルと綺麗に揃ったローファーの横に、自分の革靴を脱ぐ。この並びにも慣れてきた。
「あっ、亜里沙それだけは~!だってそれ、限定だよ!?こないだスーパーで北海道フェアやってた時に買った限定ポテチだよ!?」
「関係ないでしょー!ママホントに瘦せる気あんの?」
「……ただいまー」
半ば助け舟の意味も込めてドアを開けると、ポテトチップスの袋を抱えた娘と、そんな娘に縋るような妻の姿があった。
ソファにどっしりと座った妻の方は、立ち上がろうにも膝のあたりまででっぷりと太った腹が邪魔なのか、中々起き上がれない。
一方の娘は、勝ち誇った顔で俺を見る。
「あ、パパお帰りー。お夕飯にしよ」
「ちょ、亜里沙ー!まだ話は、ふんっ、っふん~~っ…っはぁ、はぁ、パパ助けて~…」
「ははは……二人ともただいま。…亜里沙まだ制服なの?」
妻の伸ばす腕を掴んで、ぐっと抱き上げるように引き寄せる。自分の力と俺の力でようやく重たすぎる妻の身体が持ち上がる。
「うん、先に宿題やってた。…ていうかもー、パパもママの事甘やかしすぎー。またポテチ隠してたの知ってたでしょ?」
「あー…まあ、ほら、たまにならね?」
「ほら!パパもこう言ってるんだしー、ね?亜里沙~」
「だーめ!ママは太りすぎなんだからちょっとは痩せるの!コレは没収!」
亜里沙がそう言いながら自分の部屋に戻る。…大量のポテトチップスを抱えて。
「もー……ま、いーけど。他のとこにも隠してるしー」
「ははは……程々にね」
「アハハ、パパがそれ言うー?」
むにゅんっと大きな腹と胸が俺の半身を包む。スーツ越しでも感じる柔らかさと重さは、増し続けるばかりだ。
「まあまあ、亜里沙も心配してるんだから」
「まーね、だからほら、キープ!的な?」
笑いながら、ドスドスと重たい足音を立ててキッチンに向かい夕飯の支度をする巨大な背中。
結婚して数年が経つが、一度たりとも減量に成功していない、分厚い肉の乗った背中が、ゆさっゆさっとTシャツ越しに揺れた。
一層大きくなった尻が時折ぶつかりながら、それでも慣れた様子でキッチンで支度をする妻。ジャケットを脱ぎながらそんな姿を見つめていると、亜里沙が部屋から出てきた。
制服から部屋着に着替えている。
「ママー、今日のご飯は?」
「安かったから揚げ物~!あとはこないだ冷凍してたハンバーグとー」
「多いって!もー!」
そう言いながらも母親の隣に立ち手伝いを始める娘に、微笑ましさすらある。
……横幅が倍は違う二人だが、口調や仕草の端々に母娘らしさが出るときもあり、余計に微笑ましい。
「……?パパ、何ニヤニヤしてるのー?」
「え、ああ……いやあ、似たもの母娘だな…って」
「は~!?私とママのどこが似てるの!?」
「アハハ、亜里沙もアタシみたいになるかもよ~」
「絶対なんないから!もー!パパもママも嫌い!」
そう言いながら食器を運び、プリプリと怒った顔でいつもの席に着く娘に愛らしさを覚えるのも無理からぬことだろう。
亜里沙が俺の視線に気づいたのか顔をあげ、イーッと歯を剥き出して抗議する。
……なんだか、そんな亜里沙の輪郭が、以前よりも気持ち丸くなった気がする。……そう言えば、以前も没収したポテトチップスは結局どうなったのだろう。
「亜里沙ー、ご飯取りに来てー」
「はーい!…もー、ママもお夕飯多いって言ってるのに」
呆れたような様子で歩く亜里沙。部屋着も心なしか……いや、何も見てない。
それに、あの母親の横では十分すぎるくらい細いんだから、あまり気にしても良くないだろう。
「も~、ママお皿多いってー。パパー、手伝ってー」
「ああ、今行く」
ボリューミーな夕飯をテーブルに運ぶ。娘と母親が何やら言い合ってじゃれている。
願わくば、こんな時間がいつまでも続きますように。